社内恋愛症候群~クールな上司と焦れ甘カンケイ~
「すみません、両親が色々と」
「いや、俺も言われるままにお世話になってすまなかった。いいご両親だな」
前を向いたままだったが笑顔だ。
「はい」
少し、いやかなりおせっかいなところがあるけれど、私にとっては大切な両親だ。やはり褒められるのは嬉しい。
「お前がまっすぐ育ってきた理由がわかる気がする」
「まっすぐですか……?」
「あぁ。世間知らずの純粋培養」
「世間知らずって、私だって少しは世の中の世知辛さくらい知ってます」
「そうだな。理不尽な上司に毎日叱られてたら世の中の辛さもわかるか。ははは」
声を上げて笑う姿に、思わず目を奪われてしまう。
「理不尽だなんて思ったことないですよ」
衣川課長に叱られて理不尽だなんて思わない。いつも的確にミスを指摘して次につながるようにきちんと説明してくれる。どこが悪かったのか、どこをどうすればよかったのか。だからこそ、私は彼の下で働き始めた一年前から仕事への喜びを感じることができるようになったのに。
「そうか、それならよかった」
むしろ他の上司の元で働けるのかとさえ思っている。
「それで、今日はこれからどこへ行くんですか?」
「ちょっと、付き合って欲しいところがあるんだ」
いったいどこに連れて行くつもりなのだろう。だけどリラックスした衣川課長の隣にいるのはすごく居心地がいい。
私はあえて目的地を聞かずについていくことにした。