社内恋愛症候群~クールな上司と焦れ甘カンケイ~
なにも言わずについて行くとはいったけれど、連れてこられた先に驚いた。
「随分並んでるな」
「はい。並んでますね」
そこは、雑誌にも取り上げられているパンケーキが有名なカフェだった。私も一度行きたいと思ってチェックしていたお店で確かオープンは十時だ。今はそれを二十分ほどすぎた時間なのにすでに長い列ができていた。
私たちはその最後尾に並んだ。僅かだが男性の姿もみられるがほとんどが女性だ。そのなかにきちんとスーツを着ている衣川課長の姿がすごく異質に見える。しかし当の本人は全く気にしていない様子だ。
「こんなに人気だとは驚いたな」
「色んな雑誌に掲載されていましたからね。でも、まさかここに来るとは思いませんでした」
「河原、甘いもの好きだろう。嫌だった?」
「はい、大好きです。だからこのお店も来たいと思っていたんです」
「なら、よかった。俺がひとりで来るには無理があるだろう」
気にしていないと思っていたけれど、本当は気になってたんだ。
思わずクスクスと笑ってしまう。それを見た衣川課長はバツが悪そうに頭を掻いた。
「課長も甘いものお好きなんですね。だから……コーヒーにもミルクと砂糖が必要なんですね」
「ブラックが飲めないわけじゃない。だが美味くない」
「ふふふ。そうですね。でも、どうして今まで会議中のコーヒー、ブラックのままでなにも言わなかったんですか?」
会議中も長引くと喉が乾くはずだ。ちゃんと言えば準備したのに。