社内恋愛症候群~クールな上司と焦れ甘カンケイ~
「そんなことわざわざ言うようなことじゃないだろう。手間をかけさせるのも悪い」
小さなことなのに、周りの人への気遣いをしていたなんて。それなのに合田さんには『どうせ飲まない』なんて思われていてすごくもったいない。
もっと今日みたいに色々話しをして、難しい顔をしていなければ“鉄仮面”だなんて誤解されることもないのに。
昨日から何度も見ている横顔をちらっと見る。
……でも、まぁいいか。私だけが知っているっていうのも悪く無い。秘密ってほどではないけれど、自分だけが少しだけ近くにいると思うと優越感に浸れる。
「次もお砂糖とミルク付けますから」
「あぁ、よろしく頼む」
「はい」
それから私たちは約四十分、仕事の話や学生時代の話……お互いのことを話した。いつもなら長く感じるその時間があっという間にすぎ、私と衣川課長は案内された窓際の席で、外に向かって並んで座った。
メニューを開くと、美味しそうなパンケーキの写真が色々と並んでいる。色々と目を引かれてなかなか決まらない。
「んー。やっぱり最初はスタンダードなのを食べるべきですかね? でも、このベリーがのっているのも美味しそうです。それに甘いの食べたらしょっぱいのも食べたくなりますよね。このエッグベネディクトも雑誌に載ってた……」
ブツブツとひとり悩んでいると、笑い声が聞こえてはっと我に返る。私、衣川課長と一緒だったんだ。
「すみません。ひとりでメニュー占領して」