社内恋愛症候群~クールな上司と焦れ甘カンケイ~
「いや、仕事中よりも真剣に悩んでるな」
白い歯をみせて笑う姿が眩しく映る。
「そんなことありませんよ……でも、どれもおいしそうで決められません」
どれどれといった様子でメニューを覗き込んだお互いの顔が近くづく。ふと顔をあげると、今までにないくらい近くに衣川課長を感じ息遣いまで意識してしまう。
「せっかくだし、好きなものを頼めばいい。ほら、どれにするんだ?」
「衣川課長はどれにするんですか?」
「俺はいいから、先に河原が決めなさい。仕事のときは周りに気を配ってばかりなんだから、こんなときくらい自分を優先させなさい」
いつも気にかけてくれていることはわかっていたけれど、実際に言葉にしてもらうと嬉しい。
「じゃあ、このオリジナルパンケーキの全部のせにします」
「そうか、じゃあ俺も同じものを」
店員さんを呼んで注文をしてくれた。待っている間に次に来た時はなにを食べようかと、メニューをめくる姿から本当に甘党なんだと再確認した。
「河原は次に来た時は、なににするんだ?」
それって、また私とここに来てくれるってことですか? 聞きたいけれど、聞けずに飲み込んだ。ただそのせいか胸がドキドキと音をたててうるさい。
「次はエッグベネディクトにします」
「それもいいな」
衣川課長にとってはなんでもない話なのかもしれない。けれど会話のひとつひとつが私にとってはなんだか特別に感じてしまう。