社内恋愛症候群~クールな上司と焦れ甘カンケイ~

「いや、可愛い部屋だったよ」

「……っ」

か、可愛い? 私らしい=可愛いってこと? 衣川課長の私に対するイメージが?

いや、可愛いにもいろんなニュアンスがある。女らしくて“可愛い”ってこともあるし、子どもに向ける“可愛い”の意味だってある。

一体どっちなの? いや、どっちだってかまわないんだけど、でもできれば女の子らしいなんて思われたいな……。

「お待たせしました」

私の脳内会議を遮った店員さんは、テーブルの上にパンケーキを置いた。

目の前に運ばれてきた山盛りの生クリームがのったパンケーキを見て思わず「わぁ」と声をあげてしまう。

「ごゆっくりどうぞ」

にっこりと笑って店員さんがいなくなる。

「さぁ、食べよう」

ナイフとフォークを持った衣川課長の顔が嬉しそうなの、きっと気のせいじゃないはずだ。

私も笑顔で「いただきます」と言うと、ふわふわのパンケーキにナイフを入れて生クリームをたっぷり付けて食べた。

「んーーー!」

おいしくて、思わずうなってしまう。生地は柔らかくて想像していたよりもしっとりした口当たりだ。一緒にそえられている生クリームも程よい甘さで私好みの味だった。

「すごく美味しいですね! いくらでも食べられそうです」

「そうか。わかったから慌てずによく噛んで食えよ」

苦笑する衣川課長の顔を見て、興奮気味に話をしてしまったことが恥ずかしくなる。

「はい。ゆっくり食べます」

もう一切れ、もう一切れと夢中になって口に運ぶ。ふと気になって顔をあげると衣川課長と目が合った。
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