社内恋愛症候群~クールな上司と焦れ甘カンケイ~
私に話したことで、少しすっきりしたのか、少し顔が明るくなった気がする。
私は運ばれてきた、海の幸のたっぷり入ったアーリオオーリオをくるくるとフォークに巻き付けて口へ運んだ。それにならい、汐里さんも安心した表情でパスタを食べ始めた。
「私が、成瀬のこと好きだってばれちゃったね。ずっと隠してきたのに」
しばらくして、照れた笑顔の汐里さんが言った。その表情はまだいつもの明るい彼女とはちがったけれど、少し前向きになってくれたみたいだ。
今さら……という感じだけれど、自分の気持ちを隠そうとしない汐里さんがいつもよりも、可愛らしく見えた。
でも、私みたいな恋愛初心者でも気がつくほどわかりやすいのに、どうして成瀬さんは気が付かないんだろう。
ふと考えていると、問題が解決して食欲がもどったのかとりわけたパスタをペロリと食べた汐里さんは、チーズフォンデュの串にパンとソーセージを一緒にさしてチーズを絡めていた。
「ところでさ、朔ちゃんこそ金曜日衣川課長と一緒に帰ったんでしょ? 送っていくからって言ってたけど送り狼されなかった?」
衣川課長の名前が出て動揺して飲んでいたアイスティーが気管に入る。
「ごほっ……ごほっ。な、なんですかそれっ!」
「なにそんなに動揺してるの? もしかして本当に送り狼された?」
大きな声を上げた汐里さんに「シー」っと指でして興奮を抑えてもらう。
「ごめん、でもそれだけ動揺するってことはなにかあったってことでしょう?」
鋭い突っ込みに、どこまで話をするか考える。どうせいつかは汐里さんと貴和子さんには話すことになるだろう。それに自分ひとりで色々考えるよりも、誰かに話をしたかった。
直属の上司とのデリケートな話だ。本当なら社内の人には話すべきではないのかもしれない。けれど信用の置けるふたりになら話をしても大丈夫だと思った。