社内恋愛症候群~クールな上司と焦れ甘カンケイ~
私だっていい大人だから、意識してギクシャクなんてことはもちろんない。だけどふとした瞬間に目で追ってしまうくらいは許して欲しい。
好きだと意識すると、それまでどうやって過ごしていたのかわからなくなってしまう。
もちろん衣川課長は私の気持ちを知る由もないので、今までと同じ態度だ。だけど、あの日を境に少しだけ距離が縮まったような気もする。
とにかく久しぶりの恋心が、私の生活をほんのりピンク色に染めていた。
「河原、先週の週報の数字だけどこれでできてる?」
「はい、金曜日最終に受けた佐藤産業の数字まで入っています」
「あぁ、それでいい。仕事が早いな」
「ありがとうございます」
いつもと変わらないねぎらいの言葉だったけれど、それまで特別に感じてしまう。私……重症だ。
仕事に意欲的になると、あれもこれも出来るし、したいと思えてきて、自然と仕事の量も増えてきた。周りから頼られることも多くなってきて、それが余計に仕事熱を加速させていく。
心持ちひとつでこんな風に日常が変わる体験が初めて、恋ってこんな力もあるんだと初めて知った。
過年度の資料で電子化されていないものが欲しいといわれて、ガサガサと資料室を漁ったあと、ファイルを抱えてデスクのあるフロアへと戻る。