社内恋愛症候群~クールな上司と焦れ甘カンケイ~
その途中にある、自動販売機などを置いてある休憩ブースにさしかかったところで、なかから男性と女性の聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「それで、蓮井はどうするんだ」
「別にどうもしないわよ。いつもどおり」
「お前らしいな。でも、頑張ってるんだな」
中を覗くとそこには、衣川課長と貴和子さんが話しをしているところだった。
距離はそれ程近いわけではなかったが、お互い仕事中とは違うどこか気の抜けた雰囲気が漂っていた。
思わず足を止めてしまったが、すぐに歩き始めた。
しばらく歩いたところで、不意に肩をたたかれた。
「お疲れ様」
「あ、合田さん」
たまたま廊下にいたのかもしれないが、わざわざ追いかけてきてまで話しをしようなんてことは珍しい。
「河原さん、さっき休憩ブースで衣川課長と蓮井さんがいたの見た?」
「はい」
見ようと思ってみたわけじゃない。けれど見ていたのは事実だから素直に答えた。
「やっぱり、あの噂ってほんとうだったんだ」
「噂ってなんのことですか?」
さっぱりわからずに聞き返す。
「衣川課長と蓮井さん、新人のころ、付き合ってたらしいよ。衣川課長が名古屋に転勤になって自然消滅したらしいけど、お互い嫌いになって別れたわけじゃないらしいから、まだ思いあってるんじゃないかって噂。知らなかった?」
「初耳……です」
そんな……そんな話始めて聞いた。確かに衣川課長は貴和子さんだけは心を許している感じだった。それは同期だから話をしやすいんだと思っていたけれどそれだけじゃなかったんだ。