社内恋愛症候群~クールな上司と焦れ甘カンケイ~
第三章
第三章
衣川課長への好意を抱いているからといって、具体的な行動に移すわけでもなく時間は過ぎていく。
気が付けばカレンダーは十一月になっていた。
この気持ちを衣川課長に伝えたいと思うこともあったが、それよりも先に自分が彼にどう思われているのかが気になる。
少しでも認めてもらいたい。そのために私にできることは、仕事で成果をあげることだ。
——貴和子さんのように、仕事で彼にみとめてもらいたい。
「成瀬さん、ここなんですけどちょっと見てもらってもいいですか?」
受注書の画面を確認してもらう。
「たしか、これ先月末で生産終了してるはずですが、このまま発注しますか? だとしたら工場の在庫の確認を急いだほうがいいと思うんですが」
「あっ! それ先月作ったデータだからそのままだったんだ。新しいのに変更して」
「これ、わずかですが金額が変わってきます。お客様と衣川課長に伝えた方がいいですよね」
「うわっ! アブねー。マジでやっちまうところだった。気が付いてくれてありがとう」
やってしまったという表情の成瀬さんは、私の顔を見た。
「最近の朔乃ちゃんはすごいな。俺、安心して仕事まかせられるわ」
「いえ、たまたまです」
やった! 小さなことでもこうやって感謝されるとやっぱり嬉しい。
「でも、最近ちょっと働きすぎじゃないか? 滝本が付き合いが悪いって嘆いてたぞ」
「そんなことないですよ。そんなに無理してませんから」
私は適当にごまかして笑った。
「だったらいいけど、本当にありがとう。衣川課長に報告してくる」
さっき指示された通りにデータを直すと、いったんパソコンの画面を閉じた。