社内恋愛症候群~クールな上司と焦れ甘カンケイ~
「蓮井さんは、なにしに来たんですか?」
「あぁ、衣川くんに用があって……あ、いたいた」
部長のところから戻ってきた衣川課長の元へと貴和子さんが向かう。立ったまま話し始めたふたりを見て、胸がチリチリと痛む。
「なんだよあれ、なんであんな顔するんだ」
ぽそっと、若林くんが呟いた。どうして若林くんがそんなこと気にするんだろう。
けれど若林くんの言う通りだ。相変わらず気を許したふたりが作る空気が私の胸を暗くする。
さっさと、片付けて議事録は明日、朝早く来て片付けよう。
そう決めた私は、さっさと受注処理を終わらせて帰ることにした。手元の数字を確認して工場に発注をかける。しばらくすると在庫確保が出来たと画面が切り替わった。
「合田さんへの連絡は、若林くんからお願いします」
パソコンの電源を落としながら会話を続ける。
「うん。わかった。河原さんが残ってくれていて助かりました。ありがとうございます」
「いいえ。じゃあ、私帰るから……」
椅子から立ち上がった瞬間、目の前がぐにゃりと歪んだ。パソコンがすごい形に見える。
キーンと耳鳴りがすると、視界がだんだん狭くなる。
え、嘘。ちょっとやばいかも。
そう思った次の瞬間には、意識が完全にブラックアウトする。
ガタンと椅子に体がぶつかったのだけは、体に受けた衝撃で分かった。
「河原っ!」
遠くから衣川課長の声が聞こえた気がした。けれどそれを確かめることができないまま私は意識を手放した。