社内恋愛症候群~クールな上司と焦れ甘カンケイ~
「違うの。本当にさっきまでは平気だったんだよ。引き受けたのは私だし。だから気にしないでね」
明るく振る舞ってなんとか場の雰囲気を和ませようと“大丈夫アピール”をする。けれど、私を振り向いた衣川課長の顔はひどく不機嫌そうだった。
「体調管理は社会人の基本だ。無理して仕事をしても結果がこれならばなんにもならない」
「はい。申し訳ありません」
「わかったなら、すぐに帰るぞ。タクシー捕まえてやる」
「あ、いえ。ひとりで大丈夫ですから」
「いいから早くしなさい」
ピシャリと言われてそれ以上なにも言えなかった私は、荷物を持つと課長が開いた扉へと進んだ。
「あ、ここの片付け——」
「俺、やっときますから。お疲れ様です」
「しっかり休んでね。河原さん」
「はい。ありがとうございます」
ふたりに頭を下げた私は「行くぞ」と衣川課長に急かされて医務室を出た。
エレベーターに乗り込み、裏口から会社を出た。
その間一言も会話はなかったけれど、いつもよりもゆっくりと歩いてくれている衣川課長の背中を見ていると、どうしてこんな風に迷惑ばかりかけてしまうのかと情けなくなる。
少し休んだおかげで体は平気だったが、落ち込んだ私の足取りは重かった。
裏口を出て手配したタクシーを待つ間、衣川課長がやっと口をひらいた。