社内恋愛症候群~クールな上司と焦れ甘カンケイ~
「悪い……」
その後に続く言葉が、いいものだとは到底思えない。
覚悟を決めて目をつむる。
「今は、お前の気持ちに答えられない」
その言葉を聞いたあと、キーンと耳の奥で音がした。ぐっと唇を噛みしめると、少し血の味がしたけれど、そうしていないとすぐに嗚咽をあげてしまいそうだ。
私……ふられちゃったんだ。
顔をあげると、衣川課長が眉間に皺を寄せて私を見つめていた。
困らせるつもりなんてなかった。ただ自分の気持ちを伝えたかった。
でも、衣川課長からすればどうだろう。ただの部下からこんな風に気持ちを押し付けられて気まずい思いをすることになるのだ。迷惑以外のなに物でもない。
「河原……」
「……っ、あのっ、忘れてください」
これ以上惨めになりたくなくて、言葉を遮った。
無理矢理作った笑顔はうまく笑えていないだろう。だけど、そうやって無理にでも笑っていないと、心が折れてしまいそうだった。
私は勢いよく頭を下げた。
「気持ちを伝えたかっただけなんです。はっきり断ってくれてありがとうございました」
膝を見つめながら一気にまくし立てた。