社内恋愛症候群~クールな上司と焦れ甘カンケイ~
辞令がおりたことよりも、衣川課長の元で働けなくなることの方がつらい。
その感情が沸き起こってきた時点で、やっぱり私はまだ報われない恋を諦めきれてないということを自覚した。
デスクに戻って仕事をしていると、衣川課長が戻ってくるなり私に声をかけてきた。
「河原……ちょっと面談室に来てほしい」
「わかりました」
話は異動のことに違いない。私は立ち上がると先に歩く衣川課長の後に続いた。
使用中とプレートと変更して中に入る。そこは課単位などのミーティングなどにも使われる、あまり広くない部屋だ。
先に座った衣川課長の向かいに座る。
「さっそくだが、さっきの深沢部長の話……どう思ってる?」
「どうって……会社員なので辞令が下りれば従います」
私がどう思おうと選択の余地はないように思われる。
「今回はまだ辞令という形ではない。断ろうと思えば断れる」
たしかに深沢部長も考えてみてくれという言い方だった。
「課長は……衣川課長はどう思ってるんですか?」
部下が上司にする質問ではない。そう思うけれど、私の中に残っていた未練がその言葉を口にさせた。
「いい話だと思う。能力を認められて必要とされるということなんだ。今後の河原のことを考えると確実にステップアップになるはずだ」
私のことを思っても……か。確かに色々な部署を経験することは社会人として成長できる。