社内恋愛症候群~クールな上司と焦れ甘カンケイ~
「すまない」
低い小さな声のその一言で、衣川課長の気持ちがわかった。
「謝らないでください。私、次の部署で頑張って、あぁあの時引き留めたらよかったって思われるようになります」
「河原……」
「じゃあ、今日は早く帰りたいので仕事に戻ります」
私は、立ちあがると一礼してデスクへと戻った。
自分はいらないとはっきり言われた。目頭も頬も熱い。けれどぐっと堪えてパソコンに向かう。
奥歯を噛みしめて感情を抑え込み耐える。
集中……集中。
彼の部下でいられるのはあとわずかだ。その時間を無駄にしないようにしよう。
毎日顔を合わせなくなれば、きっと心の中の深いところにある衣川課長への気持ちもそのうちなくなる。
そう思えば、異動も悪くない。そろそろ胸の中でくすぶり続けるこの恋を手放す潮時がきたのだ。