社内恋愛症候群~クールな上司と焦れ甘カンケイ~
「どうしたの? また気分悪い?」
ひどい顔をしているのだと、その時やっと自覚した。
たしかにいつもよりもたくさんの人と挨拶をかわすたびにお酒を勧められて飲んだけれど、酔っていない。
「貴和子さん……ちょっと聞きたいことがあるんです」
「なに? ちょっと、あっちで話そうか?」
私の切羽詰まった様子に気がついた貴和子さんが気を利かせて場所を変えてくれた。靴箱から自分の靴を持って、人気の少ない化粧室の前あたりで足を止めた。
こんなこと貴和子さんに聞いたところで、どうすることもできないし状況が変わることがないのも理解している。
「あの……先日屋上でもらったチョコレートのことなんですけど」
「えっ? あ、うん」
貴和子さんの視線が私の背後をチラッと彷徨ったが気にせずに話を続けた。
「あれって……貴和子さんが衣川課長からいただいたものですか?」
驚いたように目を見開いている。
「どうしてそれ……あ、もしかしてもう聞いたの?」
「もう?」
どうも会話がかみ合わない。そのとき背後からグイッと肩を引かれた。
「その話は、俺からするから」
そこにいたのは、衣川課長だった。
貴和子さんとの会話を聞かれてしまったらしい。
「そうね、その方がいいわ。しかし、衣川くんその真面目な性格ほどほどにしないと後で大変なことになるわよ。同期からの忠告」
「言われなくてもわかってる」