社内恋愛症候群~クールな上司と焦れ甘カンケイ~

私をおいて、衣川課長と貴和子さんの会話がなされているがその場にいるのに意味が全くわからない。

「あの……どういうことですか?」

「ちゃんと話をする。ちょっと待って」

そう言われて私はだまった。

そんな私と衣川課長の様子を見て貴和子さんが声を上げた。

「あっ、河原さんちょっと待ってて」

座敷に入った貴和子さんが私の荷物を取ってきてくれた。

「こっちは上手く言っておくから、おふたりはごゆっくり」

「ごゆっくりって……?」

私はあのチョコレートの出所を聞きたかっただけなのに、なぜか衣川課長に直接その話を聞くことになってしまっている。しかもごゆっくりとはどういうことだろうか?

色々わからないまま「頼む」と一言告げた衣川課長が私の手をつかんだ。

それは、以前の飲み会で私の手をひいたのと同じように。

「あの、衣川課長?」

「いいから、少しついてきて」

私は事情もわからぬまま、手を引かれて店を出た。

「ちょっと待ってください。私の送別会なんですよ、抜けられません」

なんとかその場に踏みとどまろうとするけれど、衣川課長は私の手を離してくれない。

「大丈夫だ。蓮井がなんとかしてくれる」

手を引かれるという表現は今の状況から考えると正しくない。どちらかといえば引きずられるというのが正解だ。

店を出たあと、衣川課長が扉を開いた。そこは外にある非常階段だ。
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