社内恋愛症候群~クールな上司と焦れ甘カンケイ~
「違う……俺“に”付き合ってじゃなくて、俺“と”付き合ってほしいんだ」
衣川課長の眉間の皺が濃くなる。
「俺はお前が好きなんだ。だからこれからずっと傍に置きたい」
「な、なに言ってるんですか?」
私は、握られていた手を振りほどくと一歩後ずさった。
「だって、私の気持ちには応えられないって」
「違う。“今は”と言ったはずだ」
振られた衝撃でそんな細かいところまで覚えてない。
「さっきもだが、お前は慌てずにきちんと話を聞きなさい」
「そんなぁ……だってじゃあ、私の異動は衣川課長の希望だっていったのはどういうことですか?」
それこそ私もっと誤解をこじらせた言葉だ。
「それは……」
衣川課長は言いずらそうに、視線を彷徨わせたあと私の顔を見ずに答えた。
「部下に手を出すなんてこと、許されないだろう」
「えっ……」
驚いた声をあげた私の顔を真剣な表情で見つめる。
「河原の告白を聞いた時、嬉しかった。手を伸ばして目の前にいるお前を抱きしめたかった。でも、俺はお前の上司だ。恋心を抱かせる自体問題があると今でも思っている」
……そんな。どこまで仕事人間なんだろう。
でも、私はそれを知っていた。仕事に真摯に向き合っていたし、全社において最も若い課長だからと気をはっていたことも知っている。