社内恋愛症候群~イジワル同期の甘い素顔~
第一章


第一章

恋は好きから始まる。

でも大人の恋は好きだけじゃ前に進めない。



カタカタと軽快なリズムで、デスクに向かってパソコンで資料を作る。

私と同じように難しい顔をした人たちが、みな忙しそうに働いている。

今日は会議があったせいか、普段は外回りに出ている人も社内で仕事をしている人が多い。

まだまだ残暑厳しい九月。外回りよりは体は楽だが細かい仕事が多くて神経をつかう。

「えーっと、次はこれと……。あれ? どこにしまったっけ?」

デスクの引き出しを開けながら、思わず独り言が出てしまった。

私は今日中に書類仕事を終わらせて、この先何日かぶんの提案資料を作ってしまうつもりだ。

まもなく終業時間だ。早めにこの資料を作り終わりたい。

今取り組んでいるのが、私立小学校のパソコンシステムの入れ替えだ。三ヶ月前から提案して続けている案件で、できれば今月に契約成立させたい……。

私、滝本汐里(たきもとしおり)は、業界第一位の日芝(にちしば)電器株式会社、本社第一営業部営業二課に所属している。

お客様にシステムを提案して、より快適な日々を送ってもらうのが私の仕事だ。

――と、カッコつけてみたけれど毎月数字に追われているのが現実。今月は始まって間もないから、予定をしっかりこなしていけばなんとかなるはず……そう思いたい。

私は胸まである髪をシュシュでまとめると、資料作りに集中した。

商談相手から聞き取ったニーズを思い出して、資料に落とし込んでいく。あっという間に時間がすぎた。
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