社内恋愛症候群~イジワル同期の甘い素顔~
確かに、どの部門に配属されても業界ではトップクラスの実績だ。

「俺が自信をもって勧めた商品で、お客様を幸せにしたいんだ。それが俺の日芝に入った目的」

すこし酔っていたせいかもしれない。いつもはちゃらんぽらんなイメージの成瀬が、嬉しそうに自分の夢を語った。

正直私は、日芝でなければいけないという強い思いで入社したわけではない。とたんに自分との意識の違いに驚くとともに、自分を律するいい機会になった。

「そういうの、いいね。幸せか……お客さんを幸せにする。いいねそれ」

すごく抽象的な目標だ。けれど根底にそれがあれば仕事で行き詰ったときにきっと役に立つ。

自分の仕事の指針を彼が与えてくれた。

私は夜の月明かりの下で、成瀬の顔を見て思った。

今まで薄々気が付いていたけど、やっぱりそうだと自覚した。

——私は成瀬が好きなんだ。

チャラチャラしているようで、周りをよく見ていて。いつも思い切り大きな口を開いて笑って、周りを明るくしてくれる。

でもその実、根がすごく真面目で……そんな成瀬を好きになるのは私にとってはとても自然なことだったのだ。

気がつけば片思いを始めてしまっていたのだった。
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