社内恋愛症候群~イジワル同期の甘い素顔~
「ありがとうございました」と見送られて、まだ人通りのある道を街灯に照らされながら歩いた。

マンションに到着すると入り口に、三毛猫が座り込んでいるのが見えた。思わず呼びかける。

「おーい。そこでなにしてるの?」

三毛猫が下げていた頭をちらりとこちらに向けて、興味なさそうにまた顔を伏せた。

「そんな態度取ってると、私みたいに可愛くないって言われちゃうよ」

猫にとっても余計なお世話だろう。私はそのままオートロックを解除して中に入る。エレベーターを待っている間にもう一度外を見た。さっきの猫がガラスの外でこちらを見ている。

私と一緒だな。優しくされたときには強がって……後になって後悔することになる。

自分の悪いところはわかっている。直そうと思っているけれど成瀬の前では余計に素直になれない。

深いため息をつき、自分の部屋を目指した。
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