社内恋愛症候群~イジワル同期の甘い素顔~

「あ、うん。本人は『金額は小さいですけど』って言ってるけど、新規の顧客とってくるって結構難しいことだから本当にすごいと思う」

「同じ課の先輩の滝本さんが言うなら、本当にすごいんだね」

貴和子さんが感心したように言う。

「本当にって、どういう意味ですか?」

ちょっと気になって問いただすと、貴和子さんらしくない慌てた声で否定した。

「いや、なんか言葉のあやって言うか、なんとなくそう言っただけで、別に怪しんでいるわけじゃないのよ」

「いや、そういうことじゃないんですけど」

話が途中だったけれど、店に到着して案内されたのでそこでその話は終わった。

四人がけのテーブルに、貴和子さんと朔ちゃんが並んで座り、私は朔ちゃんの向かいに座った。

私と朔ちゃんは日替わりのチキン南蛮。それにデザートのプリンも頼んだ。ここのプリンはトロトロで本当においしいのだ。貴和子さんは昨夜飲みすぎたからと言って、煮麺をオーダーしていた。

私なんてご飯、大盛りにしたのに。……でもいい。午後からは大事な取引先との約束があるんだ。腹が減っては戦は出来ぬじゃないけれど、しっかりパワー出して頑張らないと。
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