社内恋愛症候群~イジワル同期の甘い素顔~
「げっ……成瀬だ」
がらりと開いた入口のドアを見るとそこに立っていた成瀬と目が合う。生憎店内は満席だ。そして四人掛けのこのテーブルの私の隣が空いている。
こちらを見た成瀬が、エプロンを付けたおばちゃんに、こちらを指さしながらなにか話をしている。どうやら注文をしていたみたいで、それを終わらせるとこっちに歩いてきた。
「ここいいですか?」
そう尋ねた。私にではなく、貴和子さんと朔ちゃんに。
私の隣に座るのに、どうして私に声をかけないの?
ムカッときて、即座に断った。
「ダメ」
私の声に途端に不機嫌な顔を見せた。
「お前には聞いてないんだよ」だの「うるさい」だの散々な言いようだ。私も思わず言い返してしまう。
「はいはい、もうおしまい。あなたたちふたりいつになったら、仲良くできるの?」
そんな私たちを見かねた貴和子さんが間に入ってくれた。
自分でも可愛くないってわかっている。心の中で反省して口を閉ざそうと思ったときにとどめを刺された。
「滝本が朔乃ちゃんみたいに可愛ければ俺だってこんな言い方しないのにねー。朔乃ちゃん」
「え? 私ですか……?」
それまで黙ってやり取りをみていた朔ちゃんが、突然話を振られて驚いた顔を見せた。
「そうそう、こんな山盛りご飯食べるようなの、女じゃねーよ」
私のお膳を指さしながら、笑っている。