社内恋愛症候群～イジワル同期の甘い素顔～

「これでよしっ……」
パソコンと長いあいだにらめっこして、満足のいく出来の資料が出来た。これをプリントアウトして先方に出す前に佐山（さやま）課長に目を通してもらおう。
まとめていた髪をほどくと資料を手に深呼吸した。
「ふぅ……」
お客様のところで商談するよりも、佐山課長に持っていくほうが気が重い。
それは私と佐山課長の考え方が相容れないのが原因だ。
それでも上司は上司。ホウ・レン・ソウはしっかりしないと、社会人の基礎！
私は出来上がったばかりの資料を確認してもらうために、気合を入れて椅子から立ち上がり佐山課長のデスクへと向かった。
「今お時間大丈夫でしょうか？」
私がそう尋ねると、パソコンの画面を見ながら「あぁ」と一言言った。
カチン……ときたけれど、これもいつものことだ。
佐山課長は私が資料を差し出すと、こちらを見ることもなく受け取った。
「なんだこの、無駄に派手な資料は」
「表紙だけです。中身は先日ご指導いただいたことを守り情報量をできるだけ絞りこんで、わかりやすくしています」
想像通りダメ出しからのスタート。