社内恋愛症候群~イジワル同期の甘い素顔~
これ以上話をしたくなくて、私はお箸を置くと席を立った。
「ごめん、ちょっと私やらなきゃいけないこと思い出したから、先に行くね。これ払っておいて」
朔ちゃんに代金を渡すと、バッグを持って立ちあがった。
驚いた顔の朔ちゃんと、なにかを悟ったような貴和子さん、それに「おい、まだ残ってるぞ」と無神経に叫ぶ成瀬をおいて私は店を後にした。
今日のデザートせっかくのプリンだったのに。どうせならデザートだけでも食べればよかった。店を出てしばらく歩いたら、すこし気持ちが落ち着いてきた。
はぁ……せっかく久しぶりのランチ会だったのに成瀬のせいで台無しだ。
いや、成瀬のせいじゃない。自分のせいだ。
優しくされたいなら、それなりの態度を示せばいい。わかっているけれど、もしそんな態度を見せてこの距離が遠くなったらと思うと行動に移せない。
でも、今でもこんな状態なんだから、結局はいい方向には向かわないんだろうな。
そもそも、私はどうしたいんだろう。成瀬のことは好きだ。仕事もできるし、気遣いもできる。そしてなによりも私の仕事ぶりを“女だから”というレッテルを張らずに評価してくれる。よきライバルでもある。
でも成瀬には彼女がいるし、私は彼のタイプじゃない。
努力して彼のタイプになることもできるのかもしれないけれど、それはなんだか私じゃなくなる気がする。