社内恋愛症候群~イジワル同期の甘い素顔~
第二章
第二章
それから何日かした週末の仕事終わり。
第一営業部のメンバー一課、二課ともに近くの居酒屋で集合していた。
今日は前々から企画されていた、成瀬の大口契約の成約おめでとう会だった。
「では、成瀬の契約を祝してカンパーイ!」
笑顔の深沢部長の声が居酒屋の座敷に響く。
成瀬は深沢部長に肩を組まれて、笑顔で乾杯のあとビールを飲みほしていた。
渦巻く拍手の中で、嬉しそうに頭を下げる成瀬がすこしうらやましい。
数字だけがすべてじゃない。けれど数字も会社にとっては大切なものだ。
今月は私も頑張ろう。身近にこうやって刺激しあえるライバルはいるのはありがたいことだ。
「朔ちゃん、そんなに動き回らなくても幹事がいるんだから」
隣の席の朔ちゃんは、さっきから全く箸をもたずにグラスが空になった人に注文を聞いたりして忙しそうだ。
「でも、幹事さん大変そうだし」
ふたりで本日の幹事を任された社員を見ると、すでに顔が赤く呂律が回っていない。
「あーあ。でも、だいぶんおかわりも行き届いたみたいだし、すこしは自分も食べなきゃね」
「わかりました。じゃあ、深沢部長達のところに御用聞きしてからにします」
上役の席に行くのに、何故か嬉しそうに見えるのはどうしてだろう。不思議に思ったけれど、私はテーブルの上の食器を整理して、店員さんを呼んだ。
空のグラスをさげてもらい、おしぼりを大目にもらう。
そろそろ誰かが、グラスをひっくり返すころだ。
ガッチャーンと大きな音がして「わぁ!」という叫び声があがった。
言っているそばから……と思い振り向くと、そこには慌てた様子で転がったグラスを持ち上げる成瀬の姿があった。