社内恋愛症候群~イジワル同期の甘い素顔~
「なに? 私なにか変な事言った?」

「いいえ……ただ、成瀬さんも苦労するなって」

ドーナツを食べ終わったのか、車のエンジンをかけながらこたえてくれる。

「どうして成瀬が苦労するの?」

答えを聞いても、謎は深まるばかりだ。

まだ疑問を解決できていない私をおいて、若林くんはハンドルを握った。

「いえ、こちらの話ですから気にしないでください。それより出発しますからシートベルトお願いします」

「うん」

なんだか腑に落ちない。それに成瀬がどうして電話してきたのかもわからない。

でも……まぁいいっか。

契約も決まったし(私の数字じゃないけど)、ドーナツも美味しいし、今日みたいに仕事が楽しい日ばかりだといいのにな。

そして、会社に戻って、どうしても今日やらなければいけないことがある。私にとっては難しい問題をシミュレーションをしながら、車内での時間を過ごした。

会社に戻ると、すれ違った営業職員が「おめでとう」と声をかけてくれた。私と若林くんは笑顔でフロアへと戻った。

すぐに若林くんは佐山課長へと報告をして、翌日に出荷の指示が出せるようにと、パソコンに向かっている。

私は、外出中の伝言をチェックして、急ぎのものがないのを確認する。そして成瀬がいなことを確認して、佐山課長の元へと向かった。

この間みたいに、成瀬を巻き込みたくない。
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