社内恋愛症候群~イジワル同期の甘い素顔~

聖学園の契約が無事に決まって、今月の我が営業第二課としての数字は月の初旬だというのに達成できた。

しかし……問題は私の個人の契約だ。

「どうしよう」

思わず心のなかで呟いたはずの言葉が口から出てきた。

月曜日の朝、まだ出社してきている人はまばらだ。まだ休み明けでエンジンがかかり切っていない社内で、私はひとり猛烈に焦っていた。

何度パソコンの画面を見て、目標数字と実績プラス見込の数字を足したものを比較する。どう頑張ってもたりない。

先月も聖学園の契約が流れて目標数字の到達ができなかった。今月も未達は避けたい、というか絶対ダメだ。

顧客台帳をめくり、取りこぼしかないか目を皿のようにして確認していく。すると台帳にはさんであった紙がひらりと床に落ちた。

あ、これ……このあいだ成瀬がくれた宮本産業の人の名刺だ。たしか、今の担当の前任者だって聞いた。

パソコンを操作して、顧客情報のデータベースにアクセスして情報を確認した。

「もしかして……いけるかも」

ここに一縷の望みをかけるか……だったら今月の数字はクリアできそうだ。

ただ、ここの現在の担当者の安藤(あんどう)さん苦手なんだよね。

仕事だからそんなことは言っていられないのは十分理解している。けれど苦手なものは苦手なのだ。

しかし、向こうにとってもメリットのある提案だと思う。

私は急いでパソコンの画面に、宮本産業に出す提案書の作成に取り掛かった。

成瀬や若林くんに負けてばかりじゃいられない。私もちゃんと結果を出さなきゃ。

暗雲たちこめていると思っていたけれど、光明が差した。私は俄然やる気モードになって、すごい勢いでパソコンを操作したのだった。
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