社内恋愛症候群~イジワル同期の甘い素顔~
「では、お互いのますますの発展を祈って、乾杯」

「乾杯」

安藤さんの音頭に合わせて、お互いのグラスを持ち上げた。

一口飲むと、喉を程よい刺激が抜ける。グラスに半分ほど飲んで、テーブルに置こうとした。

「ほら、もっと飲んで」

「いえ、あの……いただきます」

仕事の話をするためにここに来た。だから、あまり飲みたくないのが本音だ。

けれど勧められたお酒を断るのは忍びない。

私はグイッとグラスを煽り、空にして差し出した。

「おおっ! いい飲みっぷりだね」

それを見た安藤さんはニコニコと上機嫌だ。

とりあえず、和やかなムードでスタートを切れたことに安心した。

安藤さんのおすすめの料理が運ばれてきて食事を始めた頃、私は本題を切りだした。

「それで、この間言っていたご質問の件なんですが——」

「まぁ、まぁ、まだ食事が始まったばかりですから、その話はもうすこし後でもいいじゃないですか」

「あ、ハイ」

出鼻をくじかれた私は、意気消沈してしまう。

早く話をすすめたいのに、じれったく思ったけれど我慢した。

「さぁ、これも美味しいですから。あと、ここは焼酎もおすすめなんですよ。注文しましょうね」

「でも私、焼酎は……」

「すこしだけだから、ね?」

強引に注文する安藤さんに押し切られる形で、私の前にも焼酎の水割りが置かれた。

まぁ、すこしくらいなら大丈夫かな。でもあんまり飲まないようにしないと、仕事の話ができなくなっちゃいそう。
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