今夜、君にラブロマンスをささげよう。
「……奴?」

 どういうことかと口を開けば、双葉の薄い口元に意味深な笑みが浮かんだ。

「ああ、まあ、きっとこの噂はすぐ広がるし、忙しない奴のことだ。明日にでも会うだろう」


 窓を開けると、新鮮な空気と共に吹奏楽部が奏でるゆったりとした低音がグラウンドを通り、室内に響き渡る。


「あ、噂をすれば。彼女じゃない? 今日は裏庭の掃除当番なんだね」
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