今夜、君にラブロマンスをささげよう。
わたしの耳元で低い声が優しくささやく。
吐息が耳に当たってくすぐったい。
どうしよう。
ものすごくドキドキする。
「は、はい。ありがとうございます……」
ドックン、ドックン。
緊張しているおかげで声が震える。
わたしの声は自分が思っていたよりもずっと小さくて、大きく鼓動している心音に掻き消されるような気がした。
「ここは通路の真ん中だからね、人とぶつかる確率は高いんだ。とにかく座った方が良い」
志月さんはそう言いながら、体勢を崩したわたしが起き上がるのを助けてくれる。