今夜、君にラブロマンスをささげよう。

 志月さんはわたしが取り付けたボタンの具合を眺めてそう言うと、一呼吸置いてからもう一度口を開いた。


「それでさっきの続きだけれどね、俺だってなんでもできるっていうことはないんだ。誰にでも苦手なことがあるんだよ」

「…………」

 にっこり微笑む志月さんが、頑張らなきゃと自分を叱咤(しった)し、(かた)くなったわたしの体を解す……。


 だけど、甘えてはいけない。

 わたしはこれ以上、誰にも迷惑はかけられない。

 ギュッ!
 わたしは膝の上に置いていた両手を強く握り締めた。


「七瀬さん、リボンが解けている」

「……あ」

(さっき転びそうになった時だ……)
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