フラワーガーデンへようこそ〜優しい愛をあなたに〜
「…ブーケを保管して置くところはありますか?」
「…はい、ブーケ用のショーケース型の冷蔵庫があります」

「…良かった。では、私が持って行きましょう」
「…え」

「自転車では、持って帰れないでしょう?かすみさんも乗って行ってください」
「えっ⁈いや、自転車が」

「車の方が早いでしょ?」
「…ですね」

さっきは慌てていたから、自転車なんてたいした事なかったが、帰りは慌てる事もない。普通にこげば、30分はかかるはずだ。

「…お願いします」
「…自転車は、車の後ろに乗せましょう」

薫の言葉に頷くと、かすみはブーケを、薫は自転車を押して、バンの後ろに乗せた。

運転席に薫、助手席にかすみが乗り、車は発車し、間もなくして、式場に到着した。

「…やっぱり車は早いですね」
「…プッ…そうですね」

かすみの言葉に思わず吹き出す薫。毎月来る綺麗なかすみもいいが、こっちのかすみの方が飾り気がなくていいと思う。

自転車を駐輪場に停め、ブーケを受け取ったかすみ。

「…本当にありがとうございました。色々と助かりました」

そう言って頭を下げる。

「…いいえ、お互い仕事ですからね。それでは、私はこれで」
「西園さん」

「…また、1日に花を買いに来てくださいね。お待ちしてます」

そう言って微笑むと、薫は、車に乗り込み、行ってしまった。

かすみは、バレてしまった事は不幸でしかなかったが、知られた事で、少し近づけた事が、何だか嬉しかった。
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