フラワーガーデンへようこそ〜優しい愛をあなたに〜
配達を終わらせ、フラワーガーデンに帰る途中、薫は思わず車を道端に止め、車を降りると駆け寄った。

「…かすみさん、どうしたんですか?こんなところで」

小公園の噴水のところでかすみが座っていたのだ。…普通なら通り過ぎるのだが、かすみの表情が気になって。

「…え?…ぁ、…ちょっと、座ってただけですけど?」

歯切れの悪いかすみの返事に、薫はもう一度、同じ質問を問いかけた。

しばらく答えようとはしなかったが、かすみはようやく口を開いた。

「…ちょっと、…靴擦れをしてしまって…慣れないヒールは履かない方がいいですね」

そう言って、苦笑した。

かすみは、普段ペタンコの靴が多い。仕事中も、低めのパンプスを履くようにしている。

薫に会うために、服に合う靴がどうしてもヒールの高い靴しかなくて、それを履いたのだが、慣れていなくて、靴擦れをしてしまっていた。

「駅まで遠いですね、ここからじゃ。良かったら、私の車に乗ってください」
「…いえそんな!お仕事中ですよね?落ち着いたら帰りますから、お気になさらず、行ってください」

薫の言葉に、慌ててそう言ったかすみに、薫は続ける。

「配達は終わって、店に帰るだけですし、その足が落ち着く事はないと思いますけど」

…そうなのだ。靴擦れが瞬時に治るはずはない。ここで座っていても拉致があかないことくらい、かすみだってわかっている。

「…ね?意地はってないで、素直に車に乗ってください」

「…お願い、します」

困惑しながらも、ようやくかすみは頷いた。
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