フラワーガーデンへようこそ〜優しい愛をあなたに〜
「…チーフ、離してください」

若干震えたかすみの声に、悠人は仕方なく腕を解いた。

…微妙な空気にかすみはただただ困惑する。そんな空気を破ったのは悠人だった。

「遠藤に何か用ですか?」
「…えぇ、ちょっと…でも、お取込み中みたいなので失礼します」

悠人の言葉に、冷静にそう返した薫。…心中穏やかではなかったが。

…前もそうだった。かすみと初めて式場で会った時、あの時はまだ、プランナーの女性がかすみだとは気づいていなかったが、目が合った彼女を悠人は薫から、遠ざけた。

…大事なものを守るかのように。だから、薄々感じていた。悠人はかすみの事が好きなんじゃないかと。

だが、それが確信に変わり、自分の想いが、かすみに届かないと思うと、苦しくて、どうにかなりそうだった。

こんな場面を見せられたら、自分に太刀打ち出来ない。…そう思うなら、自ら身を引くのが筋だと、薫は思った。

そんな薫の気持ちを知ってか知らずか、悠人はかすみに耳打ちすると、薫の横を通り過ぎる。

「…私はもう帰りますから…遠藤は、渡しませんから」

「…」

最後の声は、薫にしか聞こえなかった。


…。

その場に取り残されたかすみと薫は、なんとも言えない空気に無言になる。
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