フラワーガーデンへようこそ〜優しい愛をあなたに〜
でも、ずっとこのままではいけないと思ったかすみが、声を発した。

「…あの、用って何ですか」

先ほどの事にはあえて触れず、問いかけた。

「…ぇ、あ。これを」

手に持っていた鉢を、かすみに手渡した。

「…これは?」
「…うちの庭で育ててるキンセンカなんですけど、かすみさんの庭の花たちの仲間に入れてもらおうかと思って」

…『キンセンカ』(花言葉:慈愛、静かな想い)

薫は、かすみへの想いを花に託したのだ。だが、かすみは花言葉など、知るはずもない。

「…いいんですか?」
「手入れ仕事が増えますけど」

薫の言葉に、かすみはクスクスと笑った。手入れが大変だと言ったから、そんな事を言ったのだろうと思うと、なんだか可笑しくなった。

「…そんな事ありません。ありがとうございます。大切に育てますね」
「…足は?」

…花をあげたかった事もあるが、本題はこちらで、それが心配だったのだ。

「仕事中は大丈夫だったんですけど…気が緩むとダメですね」

と、困ったように微笑む。

「それはいけない…それ、庭に運んどきます」
「えっ、いや、わざわざそこまで」

「いいんです。俺が勝手に持ってきたんだから、運ばせてください」

一度かすみに渡した鉢を再び持つと、庭にそれを運んだ。

庭にそれを置くと。

「…あの」
「…はい?」

「望月さんとは、お付き合い…されてるんですか?」
「えっ⁈いえ!付き合ってません!…と言っても、説得力に欠けますよね」

かすみは、薫から視線を逸らして言った。
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