フラワーガーデンへようこそ〜優しい愛をあなたに〜
「…何を言ってるんですか?そんなわけないじゃないですか」

少しの間をおいて、冷静にそう告げたかすみ。…だが、悠人には、それは通用しなかった。

「…ホント、お前ってバカだよな。あの時と同じ顔してる」

「…ぇ?」

「…お前のお母さんが、亡くなったって連絡が来た時と同じ…大事な人を失った時の顔」

「何バカな事言って」
「…あの時こうしたら、我慢していた涙が止まらなくなった」

「…ッ」

…そうだった。オフィスで仕事をするかすみの元に、突然の母の訃報。気丈に振る舞いオフィスを出たかすみだったが、悠人に優しく抱きしめられて、堰を切ったように泣き出した。

…そして今も、あの時と同じだった。

他の男の為に泣くかすみだが、又、かすみを慰めるのが自分だという事に、悠人は安堵していた。

かすみを慰めるのは、他のやつではダメだ。自分でないと…

…。

しばらく泣いていたかすみだったが、なんとか泣き止むと、悠人に謝った。

「…すみませんでした」
「…いい、気にするな…今日は、やけに綺麗な格好だな」

「…毎月一度だけです。こんな格好するのは」
「…」

「…でも、もうしません」
「…俺の為に、してくれないか?」

「…な」
「…遠藤が立ち直れるまで、俺を利用すればいい。その代金が、お前のその可愛い格好を、俺の前でする事」

「…チーフ」
「好きとか嫌いとか、今は考えず…ただ、立ち直る事だけ考えろ」

「…」

かすみが返事に困っていると、悠人は笑って、かすみの頭をぐしゃぐしゃと撫でた。
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