フラワーガーデンへようこそ〜優しい愛をあなたに〜
会場の中に入ると、薫は一生懸命花を活けていた。

…かすみは、あの一生懸命に花を活けている薫を見るのが好きだった。ここに就職して、初めて薫を見たのが、玄関の花を活けている姿だった。

この人はどんな花屋で働いているんだろう。そう思うようになり、あのフラワーガーデンに行き始めたのが始まりだった。

それと同時期、最愛の母を亡くし、月命日の1日に、この店で、花を買い続けている。四季折々の花々に触れ、花の説明を聞くのが、とても楽しみになっていた。

だが、フラワーガーデンに行くにあたり、いつもの地味な姿で薫の前に行きたくなかったかすみは、そこに行く時だけ、姿を変えて現れた。

…薫の前では、綺麗な自分でいたいと思ったからだ。

今は、全く真逆の格好だ。分かるはずはない。だが、もしバレたら?そう思うと、何だか怖くて、悠人の陰に隠れつつ、セッティングの確認をして行く。

「…どうした、遠藤?なんで俺の陰に隠れてる?」

「気のせいですよ」
「…そうは見えないが?」

悠人の言葉に、かすみは、気のせいだと言い続けた。

「…望月さん!」

薫が、悠人を呼んだ。かすみは驚いて、思わずバインダーを落としてしまった。

「…⁈」
「…」

慌ててバインダーを拾ったかすみは、薫と目が合ってしまった。バレるのが嫌なかすみは、パッと目を逸らした。

かすみの行動を見た悠人は、かすみを自分の後ろにそっと隠した。

その行動に、かすみはまた驚いた。
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