フラワーガーデンへようこそ〜優しい愛をあなたに〜
「…もうセッティング確認済んだから、先に戻れ」
「…え?」

悠人の言葉にキョトンとするかすみ。

「…ほら、これは俺が預かるから、さっさと帰れ」

バインダーを奪い取った悠人は、かすみの背中をトンと押して、かすみはよろけて二、三歩前に進んだ。

「…西園さんどうしたんですか?」

悠人は何事も無かったように、薫の元に行ってしまった。

なんで悠人がこんな行動に出たのかわからなかったが、かすみはホッとして、会場を後にした。

*********

仕事を終えた薫は、大きなバンに乗り込むと、フラワーガーデンに戻った。

closeのカードをopenに変えると、庭園の手入れを始めた。

薫はとても頭がいい。有名大学を首席で卒業し、行く行くは、父の後を継ぎ、外交官になると期待された。

しかし、薫はそれを頑なに拒否した。そんな堅苦しい仕事より、こうやって花々に触れている方が自分らしいと思った。

だから、このフラワーガーデンを開いた。

周りの人たちをよそに、両親は、そんな薫の思いを尊重した。好きでもない仕事をしても、きっと長続きしないと思ったからだ。

日本にあるこの屋敷を薫に譲り、両親は、イタリアに帰国した。
< 6 / 74 >

この作品をシェア

pagetop