フラワーガーデンへようこそ〜優しい愛をあなたに〜

「…薫」
「…ん？」

少しウトウトしていた薫は、目を瞑ったまま、返事をする。

「…仕事で、急な人事異動があって、私…プランナーじゃなくなるんです」

「…」

目を瞑っていた薫は、静かに目を開けた。

「…私はプランナーを続けたいと言ったんですけど、上の命令は絶対だから、逆らえなくて」

「…そうなんだ。…で、どこに異動になったの？」

「…専務秘書に」
「…⁈」

かすみの言葉に驚いて、薫はガバッと起き上がった。

「…専務って、俺が迎えに行ったあの日、かすみさんの傍にいたヤツだろ？」

薫の言葉に、頷く。薫は、溜息をついた。そして、かすみを抱き起こすと、ぎゅーっと、抱き締めた。

「…薫、ごめんなさい」
「…謝らなくていい。かすみさんのせいじゃないんだから。仕事なんだから、仕方ないよ。でも」

かすみから少し体を離した薫は、かすみの両頬を両手で包み込んだ。

「…あの男には気をつけて。…こんな時期に人事異動なんて、異例だろ？…少なからず、私情を挟んでるだろうから」

「…」

薫の言葉に、曖昧に笑うかすみ。かすみの性格を考えると、押しに弱いかすみが、薫も心配なのだ。

「…俺に考えがあるんだけど、任せてくれる？」

「…かんがえ？」

首をかしげるかすみに、薫は、意味深に笑ってみせるだけだった。