フラワーガーデンへようこそ〜優しい愛をあなたに〜
薫は順番にホースで水を撒いていた。

「…あ‼︎」

その水が、突然現れた人物にバシャッとかかってしまって、薫は慌ててホースを置くと、その人に駆け寄った。

「すみません!」

そう言いながら持っていた真新しいタオルで相手を拭く。

「…いえ、大丈夫です。顔と頭にかかっただけで、服は無事なんで」

そう言ったのは。

「…貴女は」

先程、結婚式場にいたあの地味なウェディングプランナーだった。

よくよく見れば、息を切らせている。結婚式場から、フラワーガーデン迄、車で15分ほどかかる。

「…どうしたんです?そんなに息を切らせて…」

「…急いで来たんです」
「…どうやって?」
「…自転車で」

交通手段に驚いて、薫は目を見開いた。

「…なんで、自転車なんかで」
「…車の免許を持ってないんです」

そう言うと顔を赤くして俯いてしまった。

「…今、仕事中ですよね?なんでここへ?」

その言葉にハッとした顔をして、彼女は薫に言う。

「…週末の結婚式の新婦様が、どうしてもブーケの変更をして欲しいって言うんです」
「…え⁈もう、ブーケは出来てますよ?…一体なぜ?」

「…それが、新婦様のお祖母様の容態が悪くなって、式に出られなくなって。そのお祖母様に式が終わったらそのブーケをあげたいと…だから、お祖母様の好きな花で、ブーケを作りなおしてもらいたいって」

「…花の種類は?」
「これなんですけど」

ポケットの中から、メモを一枚取り出すと、薫にそれを渡した。

「…これなら今、店内にあります。幾つかブーケを作りましょう」
「出来るんですか⁈」

「…時間が無いので、気に入って頂けるか分かりませんが、頑張ってみます」

そう言って微笑んだ薫を見て、お願いしますと頭を下げた。

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