バウンス・ベイビー!
「まあ言いたくないなら仕方ないけど・・・気になる」
「言いたくないです!」
「高峰リーダーって・・・藤のこと好きなのかも。ちょっと気になるよな、あの視線」
ごふごふっ!肺が痛い!私は若干涙目になりながら拳を握り締めて、出来る限りの小声で平野に食って掛かった。
「どうして私に構うのよ!もういいから黙って仕事して、黙って2月まで過ごして、さっさと去っていってよ~!」
前を向いたままで、目の玉だけを動かして平野が私を見た。それがちょっと不気味で、私はうっと詰まってしまう。
「・・・今の藤は俺のことが好きじゃない。だから新鮮なんだ。すごく自然だし、ある意味初めて出会った人みたいな感じがある」
「あんたは初めて出会った人にキスのやり方を教えて回ってるの!?」
小声ではあったけれど、嫌味のひとつも言いたくなるでしょ。私はメラメラと燃える炎をお腹の底に感じながら、仕方なく平野と電車を待っていた。
「まあ、聞けよ」
はあ。あまりにものんびりとそう言うから、気が抜けるような感じで私は黙る。電車が参ります、とホームにアナウンスが響いた。
「まるで知らない人みたいだって言いたいんだ。だから真っ直ぐ普通に相手が出来るし、それに藤って・・・面白いよな反応が」
がーっと音が風と共にやってきて、電車がホームへと滑り込んできた。
私は呆れると同時に少しばかり悲しくなってしまって、呆けたように平野を見ていた。だから相手が出来るって・・・反応が面白いって・・・ちょっと!