バウンス・ベイビー!


「し、失礼よ」

「そうか?一緒にいて楽しいってことはいいことなんじゃないか?」

 お前はそんな言い方をしてないだろう!心の中で盛大に突っ込んだけど、私の顔は勝手に泣きそうになっている。歪んでしまう顔を見られたくなくて前をむき、ドアが開いた電車に乗り込んだ。

 電車の中では黙ったままだった。ドアに近づいてひたすら窓の外を見ようと努力する。だけど夜の電車で、光が反射して車内がうつってしまうのだ。どうやったって平野が視界に入り、ついにはきつく目を閉じた。

 もうすぐ私が降りる駅。そう思ってドアにもたれていた体を起こす。もう何も言わずに帰ろう。平野はいないってふりをしよう。

 そう決めたのに、そう上手くはいかなかった。駅に電車が滑り込み、ドアが開いたところで私に続いて平野が降りてきたからだ。背後に存在を感じて振り返った私は、驚いて叫んだ。

「はっ!?ちょっと何であんたも一緒に降りるのよ!」

 私は自分のうしろに立つ平野をガン見する。その時、平野の後ろでドアはしまり、電車は動き出してしまった。うああああ~・・・行っちゃった。行っちゃったけど、電車!?あんたの最寄駅はまだ先でしょーっ!?

 唖然とした私に、平野が言った。

「藤、泣きそうな顔してるけど」

「はっ!?」

「その顔、泣きそうだぞ」

「だ―――――誰のせいで・・・」

 つい零してしまったその一言に、平野は首を傾げた。

「俺が何をした?」



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