バウンス・ベイビー!
何をしたー!?それを言うか、それをそんな平気な顔で言うのかお前はーっ!?ががーっと今まであったことが走馬灯のように頭の中を駆け巡る。高校3年間と、最後の時、それから一々動揺させられるこの冬と、先日のキスが。何かしたって・・・何かしたってこの男!
「きっ・・・」
「は?き?」
首を捻った平野を、いっそホームに突き落としたいと本気で考えてしまった。あんな恥ずかしいことを何度も口にするなど、それこそ拷問だ!
私は暫く口をパクパクさせたあと、小さな声で言った。
「き、キスしたでしょ、私に」
「したな」
「何であんなことするのよ!セクハラでしょあれは!」
平野は髪を風になびかせながら、寒そうに首をすくめて言った。
「うーん・・・。したかったから、だよな。藤にキスしたかったんだよ。小説のリアリティーのためもあったけど。それにそんなに嫌がられてはなかったと思ったけど?」
平野にしがみついてキスを返していた自分をガッツリと思い出して、私はブンブンと頭を振りまくる。消えて消えて消えてー!
「わっ・・・私はあんたに振られたのよ!しかもこっぱ微塵に!」
「あ?ああ、それは6年前のことだろ。何で今泣きそうになるんだ?」
「それはっ・・・だって・・・」
興奮のあまりワナワナと震えがきていた。私はそれに気がついて、必死で手を握り合わせる。
「さっき平野が言ったような言葉を、6年前の私は欲しかったからよ!今じゃなくて!」