バウンス・ベイビー!


 それに優しい笑顔や、それに・・・キスも。

 『面白いんだな』とか『一緒にいたいって』のような言葉は、6年前の私が、雪の中で突っ立っていた私が欲しかった言葉だ。それなのに今、何故か不機嫌で放って欲しい私にくれることないだろう!今それを貰ったって、全然ハッピーじゃないのよ!

 平野はちょっと真面目な顔をした。それから周囲に人がいないのを確かめるように見回して、ゆっくりと口を開ける。

「わざわざ、傷つけたんだ。でもそれは悪いと思ってない」

「あ!?」

 謝るのかと思ったら、あれはわざとだったといわれてしまった。もう私はどっかーん!で、体中の熱が頭に集まってきたかのようだった。

 平野は一度ため息をつく。私達は人気のないホームにつったって、真冬の冷たい風を受けていた。

「あの頃の藤は・・・頑張って好きだって思い込んでいたように思う。俺を追いかけて声をかけることが目的みたいな、なんていうか・・・俺じゃない、俺のことを好きだと思ってる自分が好きって感じだった」

 ガツンと頭を殴られたような感覚がした。

 天からたらい桶か何かが降ってきたんじゃないかと、一瞬本気で探しかけたほどだ。

 それくらいのキツイ感覚が、頭の中で、した。

 怒りを忘れてぽかんと口を開ける私を見たままで、平野は言う。

「高2くらいかな?それくらいだったよな。急にすごいアプローチになったよな。だけど、藤はいつも周りを気にしている感じだった。何で無理して追いかけるんだろうってずっと思ってた」


< 118 / 274 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop