バウンス・ベイビー!
恥だけど、つい本当のことを言ってしまった。言った後にしまったと思う。別にそんなことまで言うことなかったのに、って。でも平野は淡々と続けてきた。
「あれが最善だと思ったんだ。藤に恨みがあるとかでは勿論なかったけど、きついくらいじゃないと引き摺るかもって。あのまま大学に行ってもずっと俺のことを考えてたらダメだって」
「・・・」
思わず考えこんでしまう私に、平野はまだ続ける。
「でももう二人とも成長したし、子供じゃない。それなりに経験のある大人だから――――――――」
・・・それなりの経験?私はパッと片手を出して平野の言葉を遮った。
「誰との何の経験?」
声にトゲがあったのが自分でも判り、言ったあとですぐに自分で自分をビンタした。ってか、私は関係ないでしょっ!
「いいの!答えなくて!ごめん!」
ぶんぶんと両手を振りながら私は後ずさる。さっきから無駄にオーバーリアクションな自分が憎らしい。それに平野が『経験』を積んだ相手の名前と年齢と外見が知りたいと心底思ってしまった自分が憎らしかった。
関係ないでしょ!平野が誰と何をしようが!
電車がホームに参ります、とアナウンスが聞こえる。気がついたら周りには、また乗客が増えてきつつあった。退散しようっ!退散だー!私はそのまま後ずさりながら平野を見ずに言う。
「じゃあね!お休み!もう帰らなきゃ!」
それから返事も聞かずに、逃走した。後ろで何かが聞こえた気がしたけれど、ダッシュで階段を駆け下りて改札口を通り抜ける。
忘年会でのお酒の酔いなど、完全に消えていた。