バウンス・ベイビー!


 バイトの上がりは1時間も前でしょうが!そう思った私が叫ぶと、平野は平然とした顔で言った。

「待ってたんだよ。そしたら電話しながらさっさと歩いていくから、追いかけてきた」

 ええー!?いやいやいや、何でよそれー!

 一瞬にしてウキウキが消え、私はまた困惑の海へと落ちる。表情が暗くなっただろう私をちらっと見て、それでも隣に立った平野が言った。

「藤さ、クリスマスって予定あり?」

「へっ!?」

「だから24か25。遊びに行かないか?」

 顎が外れるかと思った。えー!ええええーっ!何だってー!!だ。平野が、まさかの平野が私を遊びに誘っているだとー!だけど驚きのあとすぐに、私は呆れて返事をした。

 だって判りやすい現実が。

「何いってるの、どっちも仕事でしょ。平野シフト表もらってないの?」

 あんたも出勤のはずだ。だって誰も休みを取れない繁忙期なのだから。

 すると平野は、ああ、と頷いて、その後で笑う。

「仕事のあとでってこと。夜、遊びにさ」

「え」

 動揺して汗が出たかと思った。夜遊び?夜遊びなの?それも平野と?!それってお酒飲んだりってこと!?一瞬どうしたらいいのかと悩んでしまって、そうだ、と思い出した。悩む必要などないのだ!断る用事を手に入れたところだった!

 私は平静を装って前を見たままで言う。

「あの、ええと、ダメなの。都合が悪いです」

 平野はうん?と私を見下ろす。

「どっちも?」


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