バウンス・ベイビー!
「藤、何だよすんげー酒くさいぞっ!」
顔を顰めている。私は面倒臭くて頭も痛いので、すみませんと呟くだけにして、タイムカードを押しによろよろと歩いていく。
「二日酔いか?それで包丁持てるのか?」
腕組をして眉間に皺をよせたリーダーが、私を見ながら言った。作業場にいた浜口さんと前園さん、それに平野がこっちをみている。その時出勤してきた田内さんが、私のあとからタイムカードを押しながら言った。
「リーダー、仕方ないですよ、昨日はイブですからね」
え?という空気が作業場に広がった(ような気がした)。
「そうよ、クリスマスイブだもの!千明ちゃんも誰かとパーティーしたのよねー」
前園さんが楽しそうに言って、昨日自宅でしたクリスマスディナーを詳細に話し始める。エプロンを取りに離れた田内さんと、昨日の食卓について盛り上がっているパートさん達はすぐに私の二日酔いには興味を失ったようだったけれど、リーダーと平野はまだ私を見ていた。
ダルすぎる体を何とか立たせながらエプロンをつけていると、冷蔵庫へと肉を取りに行くついで、のように通りかかった平野が言った。
「昨日だったんだな、言ってた用事。その様子だと終電帰り?」
私はちらっと平野を見たけれど、返事はしなかった。それを見ていた高峰リーダーが、えらく低い声で言う。
「今日も仕事なのは判ってただろ?包丁握るのに、二日酔いじゃ困るぞ」
「すみません」
「飲みに行ってたのか?」
「はい」