バウンス・ベイビー!
彼が御辞儀を返す。その声は低くてハッキリとしていて、耳に心地よかった。意思の強さを感じさせるようだ。
「じゃあ入ろうか。チケット買ってあるから」
タカシさんがニコニコとそう言って、皆でぞろぞろと遊園地の入口に向かって歩き出す。私はここにきてようやく緊張しだした。知らない人が隣にいて、よく知っている仁美は既に彼と手を繋いで前を歩いてしまっている。
「やっぱり年末近いと寒いね。でも天気がよくてよかった」
相沢と名乗った彼がそういう。私はどぎまぎしながらそうですねと返した。あうう~!どうしたらいいのだ!
しかも、遊園地に入ったところで仁美が私達に手を振って言ったのだ。
「じゃあ、またお昼に集合しましょう。店が混むのが嫌だから、遅めだけれど1時半頃で。それまで二人は二人で楽しんでね~」
って!
「え?」
私がそう声を出すと、仁美はにやりと悪そうに微笑んだ。タカシさんが相沢さんの肩を叩いて、じゃあなと言う。
え、え、ちょっと待って~!!4人で回るんじゃないの~っ!?
パニくったのは私だけだ。他の3人はそれが普通だと思っているようだったから、これが普通なのかもしれない。内心わたわたしているけれど外面は自然な表情を装っている私に、相沢さんが言った。
「こうなるって知らなかった?びっくりさせたならごめんね」
「へっ!?あ、いえいえ。大丈夫です。・・・でもあの、私こういうのに慣れてなくて・・・退屈だったらすみません」
先手必勝だ!先に謝ることで、私は逃げ道を作ることに成功した。