バウンス・ベイビー!


 だけど相沢さんはふ、と笑って、頷く。

「遊園地なんだから、乗り物に乗って楽しめばいいと思うよ。君はどんなのが好きなの?絶叫系は苦手とか、何かある?」

「あ、お化け屋敷以外は大丈夫です!」

「・・・お化け屋敷は苦手なんだ?」

「驚かせよう!って気合が入っている場所に入るってのが、もうダメで」

 その返答を、彼は気に入ったらしい。あははは、と軽やかに笑って、私を促す。とにかく行こうか、そう言って。

 私は安心した。この人、優しい人だ、きっと。そう思って。

 それから仁美たちと約束したお昼の集合時間まで、私達は十分に遊園地を楽しんだ。相沢さんに苦手なものはないらしく、回転コースターもひたすらぐるぐる回る乗り物も落下系のものも、全てに明るい笑い声をたててらくらく乗っている。私は絶叫したり泣き掛けたりで大変だったけれど、遊園地に来るのも久しぶりだし大声を出して遊ぶのも久しぶりだった。

 肩の力は抜けていた。緊張も、いつの間にか抜けていた。私は全身で遊びに没頭していた。土曜日で天気がよく、遊園地は家族連れやカップル、学生なんかでほどほどの混みだった。乗り物の待ち時間に、相沢さんと色んなことを話す。天気やニュースの話も、仕事や食べ物の話も。私はよく笑っていたと思う。

「ねえ、藤さん」

 相沢さんが改まった口調でそう呼んだのは、時間がきたから仁美たちと合流しましょう、と約束の食事場所へと歩き出したときだった。

「はあい?」

 すっかり緊張の取れていた私は、隣を見上げる。どうしたんだろう、この真面目な顔。そう思っただけだった。


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