バウンス・ベイビー!


「いいんですよ、私に遠慮しなくて」

 え?と彼は顔を上げる。

「今日も、無理やりつれてこられたんでしょう?実は私もそうなんです」

「え。・・・そうなの?」

 はい、と私は頷く。この人は、まだ元カノが好きなんだ。だけど世話好きの周囲に話を進められたって図なんだろう。それがストンと判ってしまった。うーん、可哀想に。しかもこの人いい人だから、私に申し訳なく思ってるんだろう。早く楽にしてあげなければ!

 私はベンチの上で体ごと相沢さんへ向けて話す。

「私は、今まで付き合った男の人がいないんです。片思いはありますけれど、失恋して。それで長い間人を好きにならなくて、心配した仁美が紹介するよって話を進めてくれたんですよ。でも、私はまだ―――――――誰かと付き合う準備が出来てないと思うので」

 相沢さんが私を見た。とても真面目な顔だった。

「だから私に申し訳なく思うことはないんですよ。紹介されたから付き合って当然ってことではないんだし。私は今日とっても楽しかったし、お陰さまで仕事のストレスも発散出来ました。それで十分です。相沢さんは、帰ったらちゃんと彼女に連絡してみればいいと思います」

 しばらく私を見ていたけれど、その内にゆっくりと、相沢さんが微笑んだ。それは優しい笑顔だった。

「うん、ありがとう」

「きっと彼女も寂しく思ってますよ。怒ってるとつい言ってしまうことってありますしねえ~」

「売り言葉に買い言葉がね」

「そうですよね。あれってホント危険」


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